newNAPPAFUKU-21 (20210620)

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前20号から続く

③ファンクションゼネレーター(超低周波発振器)
 これも自社製品だったが、私班が担当することになった。いくつかの製品で研究部とのつながりで技術部を通さずに直接製造部門に下ろされた製品で前号②パルスカウンターに続く2つ目の製品だった。

 今ではIÇ一個で主要部分ができてしまうが、当時は真空管を沢山使った最新発振器で、方形波・三角波・サイン波の三つの波形出力が得られる。
 簡単に原理説明すると最初に方形波を発振させ、これを積分して三角波に変え、三角波をまるめてサイン波に整形する、という発振器で特徴は低い周波数0,01Hzから0,001Hz程度までの低い周波数(超低周波)を発振することができる。
 今でも自動制御関係ではこの発振器が使われているが、オーディオでもDCアンプが出現して使われるようになた。
 特注品もあり、周波数を1桁下げる、log出力をつけるなどがあった。これらの特注対応は私班で対応したので、わからないことは研究部に教えてもらった。周波数を下げるのは割と簡単だったが、コンデンサーの選別や高品質化が必要だった。ハーメチックシールコンデンサーをはじめて使った。

(このコンデンサーは今でも高級真空管オーディオ製品に使われているようだ)

 0.01や0,001Hzはどのように周波数を調整確認したか?、最低の0.001Hzは1周期1000秒(約16分)の波形である。これはアナログレコーダで描いて確認した。
 問題はLog出力だった。原理はサイン波の作り方と同じやり方でできると教えられ、実験したが・・・、いうほどうまく出来ない、結局はlogカーブ可変抵抗を特注し、周波数用可変抵抗と連結してできた。このやり方は後に他製品で役立つことになる。

 

 今日のファンクションゼネレーター

ファンクションジェネレータ - Wikipedia

 

 

④糸むら試験機
 S社の製品、P社の外部顧問技師A氏が試作、この製品化に携わった。これもなぜ製造畑の私の下やってきたのか?
 簡単に測定原理を説明すると、静電容量(コンデンサー)中に糸を通してその容量変化を検出して糸の太さの変化(ムラ)を測定する装置である。この試作機でS社担当技術者が測定データを取ってS社技報に発表された。当時、糸むら試験機は外国のU社製が業界スタンダード機で糸むら単位はU%と呼ばれた。それに習ってS社がS%として開発した製品、P社からA顧問技師に設計依頼されたのでP社技術陣は関係してなかった。それで製品化にあたってS社担当の私に白羽の矢が当たったのかもしれない。
 一号機が岡山県井原市にある繊維試験所に納品された、で設置に行くように指示があって出張となった。まだ新幹線の無い時代、前日岡山駅前に1泊して井原市に向かった。試験所に到着すると10名ほどの技師が待ち構えていて準備万端ととのっていた。しかしここからが問題だった。「これでは設置することは無いが?」と思っていると、長らしき方が、「S社から取扱説明に来てもらったのでよく聞いてほしい」と、「エツ!」とびっくり仰天した。出張指示は設置だったはず、取扱説明なんて聞いてなかった。工具は持ってきたが、取扱説明の準備は何もしてない、これには大変あわてた。実は私は製作し電気的な調整はしたが、実際の糸を通してのテストはS社技術者がしたので実際の使用方法は、試作品の説明時に少し聞いたことしか知らなかった。私20歳過ぎのことで相手は試験所のそうそうたる年配の技師達であった。S社から設置に行けと指示を受けた下請けの者だから知らない、とは言えない雰囲気になっていた。意を決して知ってることを全部説明しようと開き直り、電気的測定原理からはじめて操作説明(相手が電気屋ではなかったのが幸い?)ここまでは何とかなったが、さて糸を通して測定という段になった。そのとき助け船が現れた、担当者と紹介された方が、「それは私がやります」といって測定準備され測定がはじまった。「ああ助かった!」と、無事に説明が終わり、最後に質問、先にあった「U%とS%との違いは」「再現性は」「温湿度の影響は}など、何と答えたのか覚えてないが、それなりに納得していただいたようで、無事に終わった。
 帰りは山陽本線笠岡駅までバスに乗ったが、疲れ果てて最後尾席で寝込んでしまった。駅についた後、バスが車庫に入ってから運転手が気ついてたたき起こしてくれた。
しかし、この試験機は何台作ったのかなぁ?たくさん作った覚えがない。

 

 井原市 (city.ibara.okayama.jp)

 該当する繊維試験所を探したが見当たらなかったので井原市HPです、

60年も前の事だから岡山県工業技術センターに統合されたのかもしれない

岡山県工業技術センター (pref.okayama.jp)